東京電力の福島第一原子力発電所事故は、1-3号機の炉心溶融(メルトダウン)という原発事故としては最悪の事態に至り、放射性物質の外部への流出を止められない状況が続いている。さらに菅直人首相は「東海地震の想定域にあり、高い確率で大地震が起きる」ことを理由に中部電力の浜岡原発の停止を要請した。全国で定期点検中だったり、新規の運転開始を待っていた原発は地元が運転再開を認めず、新たに定期点検に入る原発が次々に運転を停止している。6月中旬段階ですでに全国54基の原発のうち35基が停止、このままの状況が続けば、来春までには全54基が停止する。「原発の動かない日本」がやってくる。
 2002年に発覚した東電の原発トラブル隠しの際に東電管内の原発が総点検に入ったため、東電管内では「原発全基停止」を経験済みだ。だが、トラブル隠しの際は、みつかった問題の点検、補修が済めば、順次再稼働が許されていた。今回は出口のないトンネルであり、最も極端なケースを想定すれば原発全基が止まったまま、2度と動かないこともあり得る。日本の電力不足が長期化する懸念は決して小さくはない。
 だが、より長期的な視点に立てば、いま問われているのは、根幹から崩壊した日本のエネルギー安全保障政策をどう立て直すかである。しかも、原発事故の当事者である日本のみならず、急増する電力需要を原子力で賄い、「脱石油」によってエネルギーの対外依存度の上昇を抑えようとしていたアジアの新興国、途上国のエネルギー政策をも大きく狂わせてしまった。今やアジア全体のエネルギー安全保障政策がメルトダウンの瀬戸際にあるのだ。

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