原子力損害賠償機構法案 ~「二段階方式の破綻処理」はやはり虚像?
2011年7月27日
「原子力損害賠償機構法案ウォッチングの部屋」のようになってしまって恐縮だが、まさに動きのあるテーマなもので、またこれについて。
民主・自民・公明3党での修正合意がなされた原子力損害賠償機構法案は、26日、衆議院で委員会可決。28日には本会議にかかり、衆議院を通過する見通しとなった。
前回のエントリーで、国会の場での審議がほとんどなされない可能性を指摘したが、危惧したとおり、修正案についての審議はわずか2時間。あっという間に法案成立に向かいつつある。
ただ、短時間の審議とはいえ、ここで明らかになったこともあった。
柿澤未途議員(みんなの党)の質問に対して、海江田経済産業大臣の「(法案が成立したのちの)債務超過は想定していない」との答弁だ。
「二段階方式で債務超過になり、法的整理がなされる」のかどうかは、先週来、評価が割れていた点だった。
朝日新聞は「法的整理の途が開かれた」と修正合意を高く評価したのに対し、東京新聞は「絶対安心の生命維持装置を確保したも同然」と断じていた。
結論から言うと、正しかったのは東京新聞だ。
修正案の条文をみても、二段階方式での法的整理を担保する規定は存在しない。担当の経済産業省も「債務超過は想定していない」ことが明らかになった。
さらに、修正協議にあたって、官僚が与野党議員への根回しに使ったと見られる資料も出回っている。
この資料には、「法案修正のポイント」と「修正が許されないポイント」が整理して書かれていて、「勘定区分を設けること」という論点(一時、自民党内で主張された論点)に関し、「東京電力が債務超過になってしまうので、修正が許されない」と書いてある。そして結局、修正協議は、勘定区分はなされない形で決着。
・・・つまり、これを見る限り、東京電力が債務超過になることのないよう、役所が周到に根回しを行い、それが奏功した、という経過に見えるのだ。
もちろん、資料の真贋には議論があろう。それも含め、オープンな国会審議の場で、この修正案がいったい何を目指すものだったのか、きちんと明らかにしてもらいたい。
(原 英史)
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