黒幕・農協が仕掛けた大キャンペーン

執筆者:山下一仁2011年8月8日

 TPP(環太平洋経済連携協定)反対論への批判の最後に、農業を取り上げる。これは私の専門だからというだけではない。TPP反対論者の主張を分析することで、彼らの背後にいる勢力をあぶりだしたいからだ。
 農業界の中でも、多くの企業的な農家はTPPに賛成である。高齢化や人口減少の中では、国内の農産物市場もどんどん縮小する。これまで国内市場は高い関税で守られてきたが、彼らは、このままだと、生産を縮小するしか道はないことを知っている。しかし、世界の人口は増えるし、経済が高成長している国が東アジアには多い。日本農業が生き残るためには、輸出によって成長する海外市場を取り込むしかない。そのためには輸出相手国の関税は低い方がよい。つまりTPPなどの貿易自由化が日本農業にとっても必要という考え方なのだ。
 また、日本の経済力が失われてしまうと、価格の高い高品質の農産物を日本の消費者に買ってもらえなくなる。もし、各国が1990年から2008年までと同じ成長率を続けると、2020年までに日本は1人当たりGDP(国内総生産)で韓国、台湾に追い抜かれ、そのはるか後塵を拝することになる。日本が途上国のマレーシアとほぼ同じ水準となるのだ。企業的な農家は、TPPに参加しないで日本経済がおかしくなれば、農業自体生きていけないことがよくわかっている。高い価格であろうと、財政負担であろうと、日本経済に余裕がないと農業を保護できない。TPPに参加して日本経済が活性化することを企業的な農家は望んでいるのだ。

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