ロバート・ライシュは米国を代表する経済学者にして、政治家、そしてリベラルな政治スタンスに立った社会批評家である。
 ライシュが登場した1990年代以降 20年、3つの立場を使い分けながら、発言、行動、実践してきた。そして、私なりにこの間の彼を評価するなら、社会批評家としては1流だが、経済学者としては並み、政治家としては2流だった、と思う。
 もっとも、彼は、タイム誌の「最も業績を収めた 20世紀の閣僚10人」に選ばれ、ウォールストリート・ジャーナル誌でも「最も影響力のある経営思想家20人」に指名されているのだから、私の彼に対する評価は、マスメディア的に見れば、一種のひが目なのかもしれない。

『余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる』 
ロバート・B・ライシュ著
雨宮寛・今井章子訳
東洋経済新報社
『余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる』 ロバート・B・ライシュ著 雨宮寛・今井章子訳 東洋経済新報社

 今回、取り上げる『余震 そして中間層がいなくなる』には、こうしたライシュの3つの役割、その長所と欠点がすべて詰め込まれている。  イントロダクション「歴史は繰り返す?」で、1929年の大恐慌と対比しながら、リーマンショック以降の米国のおかれている状況を整理してみせる。第 1部「破たんした取引」では、米国において本当に壊れてしまったのは何なのかということを、経済学的な裏付けをもった社会批評家として分析する。第2部の「反動」では、的確な方策が打たれないまま2020年にいたると、米国が内向きになり、理想とかけ離れた国になってしまう可能性を、政治家として社会批評家として懸念する。第3部の「まっとうな取引を取り戻せ」で、こうした事態を避けるためのリベラルな方策を提言する、という構成である。

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