国務省は、8月26日、カナダのアルバータ州で生産されるオイルサンドから抽出されたタールサンド原油をテキサス州のメキシコ湾沿岸地域にある石油精製施設に輸送するパイプライン建設計画案について、環境への影響はないとの環境評価を下した。このキーストーンXLパイプライン計画は、カナダの大手エネルギー企業トランスカナダ社によるものである。今後、関連省庁の承認、追加調査の実施、公聴会の開催、パイプラインが敷設される州政府との協議などの手続きが残っているが、今回の環境評価で大幅見直しは行なわれずにオバマ政権が年末迄に正式承認することが確実視されている。これにより同パイプライン建設計画案はその実現に向け大きな一歩を踏み出すことになった。

 建設費用総額70億ドル、総距離約1700マイルにも及ぶキーストーンXLパイプライン建設計画案については、建設推進派と反対派が真正面から対立しており、激しい議論が展開されている。建設推進派はエネルギー安全保障の観点から、不安定化する中東地域への過度の原油依存から脱却し、地政学上のリスクが殆どない隣国カナダから原油を輸入するためにも建設を推進すべきと訴えている。スティーヴン・チュー・エネルギー長官も中東地域に過度に原油を依存するよりもカナダへの依存を高める方が米国の国益につながるとの見解を示している。建設推進派は雇用創出の観点からも同パイプライン建設計画案への支持を明確にしている。ゲリー・ドーア駐米カナダ大使は同パイプライン建設による米国内での雇用創出効果について繰り返し訴えてきた。

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