今、ニューヨークに来ている。金曜夜から週末にかけて、NHKのBS1「ワールドWave トゥナイト」の「9・11事件から10周年」を記念した特集に解説で参加するためである。

 ここまで来るのにも、まっすぐ太平洋を渡ってきたのではない。今月初めに東京を出て、イスタンブル経由でまずカイロに行き、ロンドンにも立ち寄って、地球を半周してニューヨークにたどり着いた。

 その過程で、知識人や活動家、宗教家などにインタビューをして撮影した。それらは短いVTRとして下記の番組の中で使われるはずだが、編集をするのは私ではないので、非常に長い間話したうちの、どの部分が切り取られて、どのように意味づけられるのか、一視聴者として楽しみにしている。

 世界を一周するこんな無茶な行程の番組制作に協力しているのは、普段、日本のテレビ局の国際報道・ドキュメンタリーを見ていて歯がゆい思いをしているからだ。独特の感情的・感傷的な現実把握と表現法に阻まれて、日本の視聴者に、国際社会の現実が、世界の知的階層や圧倒的多数の大衆が認識しているのと同じようには伝わっていない。端的に言えば、日本製の報道・ドキュメンタリーは、なかなか海外に「売れ」ない。

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