「台風の目」の安哲秀氏 (C)EPA=時事
「台風の目」の安哲秀氏 (C)EPA=時事

 韓国で、来年12月の大統領選挙に向けた大きな地殻変動に発展するかもしれないような動きが出始めた。この動きが既存政党の政治支配の構造を突き崩すものになるのかどうか目が離せない。  問題の発端はソウル市の給食無料化であった。昨年6月の統一地方選挙でのソウル市長選は、与党・ハンナラ党の呉世勲(オ・セフン)候補が47.4%を獲得、野党・民主党の韓明淑(ハン・ミョンスク)候補の46.8%をわずか0.6ポイント上回って辛勝した。しかし、ソウル市内の25区の区長選挙では民主党が21区で勝利、ハンナラ党が勝ったのはわずか4区だけだった。ソウル市議会も106議席中、民主党が79議席を獲得したのに対し、ハンナラ党は27議席にすぎなかった。呉世勲市長はかろうじて再選を果たしたが、市議会は完全に「与小野大」という少数与党状況に陥った。  韓国では中間層の崩壊による貧富の差の拡大、非正規労働者の激増などによる不公平感が広がる中で、野党・民主党は次期総選挙の争点として「福祉」を掲げ、ソウル市ではその前哨戦の形で給食無料化を求めた。  しかし、呉世勲市長は貧困層の給食無料化は既に実施しており、全児童の給食無料化を実施することは「ばらまき福祉」であり、ソウル市の財政を圧迫し、他の政策の実行を妨げると反対した。  議会少数派の呉世勲市長はこの状況を突破するために、住民投票という強硬手段に出た。  住民投票は8月24日に設定されたが、呉市長の「ばらまき福祉反対」の声は市長が期待したほどの広がりを見せなかった。次期大統領を目指す「潜龍」の1人とみられている呉世勲市長は背水の陣をアピールするために8月12日には次期大統領選不出馬を表明した。さらに8月21日にも記者会見をし、住民投票に敗れれば、ソウル市長を辞任すると表明した。民主党を含めた野党勢力は、投票者数が有権者の3分の1に達しない場合は住民投票が成立しないため、投票ボイコットを訴えた。

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