ニジェール政府の報道担当者が14日、AP通信に明らかにしたところによると、リビアのカダフィ大佐の3男サアディ氏がニジェールの首都ニアメーで政治亡命を求めた。カダフィ政権の空軍トップら高官3人も政治亡命を求めているという。

 しかし、肝心のカダフィ大佐の居場所については、様々な情報が流されているものの、その行方は知れない。ただ、それは当然のことであろう。何故ならば、それぞれ独自の思惑を持つリビアの国民評議会、カダフィ政権側、フランス政府や北大西洋条約機構(NATO)、近隣のニジェール、ブルキナファソなどが、それぞれの国益のために情報戦・心理戦を仕掛けていると思われるからだ。

 たとえば、国民評議会といっても様々な考えを持つ人々の集合体である。中には前線でカダフィ軍と戦い多くの仲間を失ってきたことから何としてもカダフィ大佐と一族を拘束し裁判にかけたいと考えている人たちもいる。他方、カダフィ大佐を拘束し裁判にかければ、残党による奪回の動きや散発的なテロ事件もあり得るので、むしろ国外に逃亡された方が国づくりや復興に専念できて良いと考えるクールな人たちもいないわけではない。

 また、フランス政府やNATOにしても、カダフィ大佐や一族の裁判の過程ですでに明らかになりつつあるように、カダフィ政権と欧米諜報機関とのアル・カイダ情報を巡る協力関係がさらに公にされる危険は避けたいと考えている向きもいるに違いない。それならば、いっそ拘束の過程でカダフィ大佐や一族を、抵抗されたため止むを得ない措置であったとして殺害し口封じをすることも可能なはずである(しかし、すでにNATOによるリビアへの軍事介入に反発する声がアフリカ諸国や一部中東諸国からも聞こえ、加えて、イスラム世界に米国によるビン・ラディン容疑者殺害への反発も残る状況では好ましい選択ではないのだろう)。

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