発言録の出版で朱鎔基ブーム

執筆者:野嶋剛2011年9月20日

 先週北京に半日だけ立ち寄ったが、空港や市内の書店ではいちばん目立つところに朱鎔基前首相が今月出版した発言録「朱鎔基講話実録」(人民出版社、全4巻)が置かれていた。

 朱鎔基は1991年に鄧小平から副首相に抜擢され、1998年から2003年まで首相を務めた。発言録はその間の演説、談話、手紙、公式文書への書き込み、部下への指示など348件の文書からなり、分量は120万字に達する。最新のベストセラーランキングでは1~4位は、1巻から4巻が独占している。退任8年を経ても、この人への追憶は、いまなお強いものがあることを証明した形だ。

 いちはやく朱鎔基特集を組んだ「看天下」という時事雑誌が大売れしているようで、雑誌スタンドで何を買うか迷っていたら店の人に「読みなさいよ。売れてるから」と勧められた。

 ビデオで、朱鎔基は発言録について、「この本には一つの特色がある。それは、事実だけを語っていることであり、うわっつらだけの無駄な話は入っていないということだ」と語り、ずばっと言い切る「鉄腕宰相」節は健在だった。

 恐らく、彼らの多くは「朱鎔基後」の8年間に起きたことについて、「もし彼がいたら」という思いが脳裏をかすめたのではないだろうか。

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