危機は深化しつつある(7月のユーロ圏緊急首脳会議)(c)AFP=時事
危機は深化しつつある(7月のユーロ圏緊急首脳会議)(c)AFP=時事

 ギリシャに始まった政府債務危機は、今や欧州全体を飲み込もうとしている。欧州が混乱に陥れば、その余波は全世界に及ぶ。韓国、インドネシア、ブラジルなど新興国でも、外資の流出で経済と金融に亀裂が走っている。危機慣れしているのだろうか、日本はそれを他人事のように見ているのだが。  9月22日、ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、当初予定していなかった声明を出し、ユーロ圏が次回のG20財務相会議までに危機収束の手立てを講ずるであろうとうたった。次回の財務相会議は10月14-15日にパリで開かれる。

込み入った危機の構造

 欧州の債務危機は込み入っており、日本からみていると理解しづらい。①当面のギリシャ危機対応、②危機拡大防止に向けた対応、③将来の財政・金融安定化策の3つの層に分けてみるのがよいだろう。日々飛び出す当局者の発言も、何らかの形でこの3つに絡んでいるからだ。
 今回のギリシャ危機が深刻になったのは、9月2日にギリシャ政府が、経済の悪化によって金融支援を受ける際の財政立て直しの目標を守れなくなった、と認めたことが発端だ。金融支援を実施する際のお目付け役である欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)の担当者が、もう少し考え直したらどうか、といってギリシャを離れた。
 3機関であることからトロイカと呼ばれるEU、IMF、ECBは、少し冷却期間を置こうとしたのだ。金融市場はトロイカのアテネ離脱を危惧した。ギリシャの資金繰りが付かないことを承知していたからだ。そもそも、この融資はギリシャが深刻な政府債務危機に陥った2010年5月にEUとIMFで決めた総額1100億ユーロ(約11兆円)の融資(第1次金融支援)の一環。80億ユーロの融資第6弾で2011年9月中に実施することになっていた。

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