東電擁護の旗手・米倉氏 (C)時事
東電擁護の旗手・米倉氏 (C)時事

「日本は経済一流、政治は二流」と言われたのはせいぜいバブル期までのこと。数年来の短命政権の繰り返しで政治は三流以下になり下がったが、経済も大幅なランクダウンを免れなかった。スケールアップしたグローバル化に効果的な対応ができず、日本の有力企業は成長の糧を見いだせないまま、時代を追うごとに競争力を低下させている。その根本的要因を探ると、相も変わらぬ“老人支配”に行き着く。有力企業の大半がいまだに60代以上の社長、会長を経営トップとして頂き、過去の成功体験を基準に老耄経営を続けている。  内閣総理大臣が一国の政治を体現する人物であるなら、経済のそれは「財界総理」と呼ばれる経団連会長だろう。現職の米倉弘昌(74)は誰もが嘲笑する「東京電力擁護論」を頑固に説き続け、そればかりではなく、「空洞化」を殺し文句に円高対策や原発再稼働などの要求を政府に突きつけている。

「国内空洞化」の尖兵

 米倉は日本企業の競争力向上を執拗に主張するが、出身企業である住友化学が2000年代初めにいち早く韓国に進出し、液晶用カラーフィルターや偏光フィルムの供給でサムスン電子の飛躍に大きな役割を果たしたことはおくびにも出さない。米倉は03年12月、2年間で約870億円を韓国の液晶用フィルター量産工場などに投資したことを讃えられ、韓国政府から「銀塔産業勲章」を授与されている。
 海外進出や外国政府から勲章を受けることが悪いと言っている訳ではない。グローバル化に対応して企業が生産拠点を海外に移転させたり、現地政府や企業と緊密な関係を築くのは当然の経営戦略だ。看過し難いのは、空洞化や電力不足といった懸念材料を、財界や業界の主張を通すための“道具”として利用している印象が拭えないことである。
「電力がないと半導体もつくれない。自然エネでも半導体はつくれない」(7月28日付朝日新聞朝刊)
「電力の安定供給などにも不安がある。そのため、まず海外に出るという選択を検討せざるをえない状況になっている」(週刊東洋経済10月1日号)
 米倉は「電力は産業のコメ」と言い、原発の稼働停止がもたらす電力不足が産業の空洞化につながると主張する。しかし、果たしてそうか。
 日本の製造業誘致に熱心な韓国だが、9月半ばに全土がブラックアウト(突発的大停電)寸前に陥ったことからもわかるように、電力供給に大きな不安を抱えている。また、同じように日本企業誘致に熱心な中国では多くの地域が韓国以上に電力供給体制が不備なままだ。原発停止による電力不足が日本の空洞化の決定的要素にならないことを、海外戦略に熱心な企業が名を連ねる経団連の首脳が知らないはずがない。

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