素人による自衛隊のコントロール

執筆者:2011年10月5日

 アジアにおけるグローバリズムの発展は、米国の支配を継続させる一方で中国の抬頭を招き入れ、米中を軸とした新たな帝国主義的対立構造を生み出すに至った。成長を支えるエネルギー資源の獲得は、各国の急務であり、石油代替エネルギーの開発は、排他的経済水域の活用にも大きな役割を与えている。自国の領海を基本とする海洋政策の策定と実行は、もはや領土を保全する安全保障問題にとどまらず、日本の将来を計画する上で、今までになく重要な課題となっている。そこに米ドルの地位低下と日本における未曾有の災害が加わり、もはや冷戦時代の残滓とは異なった次元での非伝統的な脅威と対立が発生している。国際社会における日本の相対的地盤沈下には歯止めがかからず、その国難からの脱却に希望を見出そうと、日本国民は民主党に期待をかけたものの、2年間にわたってその期待は裏切られていると言ってよい。これが、日本の経済人の文民としての一般的な認識と思われる。

 政権の力量は国力の骨幹を成し、首相については言うべくもないが、各省の大臣は、その分野において、指導を行ない判断し実行する責任が重い。「素人だが、これが本当のシビリアン・コントロールだ」とした一川防衛大臣発言であるが、まずは、日本の文民としての一般的な認識のレベルを「素人」としたものなのか、あるいはそのレベルまで到達していない自分にひけ目を感じたものなのかが不明である。前者であることを祈りたいが、文民の一般的な認識を素人と断じるならば、それはそれで心地よくはない。

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