「グッチ首相」はデンマークを変えるか

執筆者:国末憲人2011年10月11日

 デンマークの総選挙で中道左派勢力が過半数を占め、社会民主党党首のヘレ・トーニング・シュミットが10月2日、女性として同国初となる首相に任命された。これは、単にこの国の政権が右派から左派へと10年ぶりに移行する以上の意味を持っている。2001年以降右派政権を閣外協力で支えてきた右翼政党「デンマーク国民党」が、ようやく表舞台から退場することになったからだ。

 ポピュリスト的傾向の強い女性党首ピア・ケアスゴーの下、95年に結党されたデンマーク国民党は、根強い大衆人気を背景に、自由党主導の右派政権への影響力を強めてきた。その結果、デンマークはこの10年間、差別的と言えるほど厳しい移民排斥政策を次々と実現させた。これに伴って、欧州でのデンマークのイメージも大きく変化した。かつてこの国は、充実した福祉や高い教育水準から「世界で最も暮らしやすい国家」と尊敬されていた。人々はこの国を今、欧州で最も排他的、差別的な国家と見なし、胡散臭そうに眺めている。

 左派新首相は、失墜したデンマークのイメージを回復できるだろうか。

 右翼の影響を受けて右派政権が実施した政策で最も論議を呼んだのは、右派政権発足翌年の2002年に法制化された国際結婚の規定だ。24歳未満の国民が外国人と結婚した場合、配偶者の国内居住が原則的に認められなくなった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。