中国のタイ水害支援が浮かび上がらせたもの

執筆者:樋泉克夫2011年10月17日

 就任から約2カ月。タイのインラック首相は最大級の試練に立ち向かわなければならなくなった。タイ全土の3分の1ほどが水没する水害である。首相は、政権の面子にかけて首都のバンコクの被害は最小限に押さえ込むと言明したが、やはり問題はトヨタ、ホンダ、ソニーをはじめとする300社以上の日本企業が進出している、バンコク北郊にあるアユタヤの工業団地だろう。日本企業にすれば3.11に次ぐ大被害であり、アユタヤの復旧が遅れた場合、経営体力を大幅に殺ぐことは必至だろう。

 報じられるところでは、10月10日、“亡命先”の中東のドバイで、首相の実兄であるタクシン元首相は、今後の洪水対策に要する費用を借款方式で中国政府に求めるようタイ政府に提言したことを明らかにした。その際、タイの償還能力はアメリカ以上に高く、農産品で償還すれば農産品輸出と農民の収益につながるとし、在タイ中国大使を説得する必要があるとも付け加えた。

 その中国大使だが、12日午後、バンコクのドンムアン空港でタイ政府の法相、情報科学・通信相、与党最高幹部らと中国南方航空機を出迎えている。同大使に拠れば、同機が運搬した「緊急人道支援物資」は救援舟艇と揚水ポンプなど総額1000万元規模で、中国政府からはタイ首相府の口座に100万ドルの援助が振り込まれるとのことだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。