脱原発を訴えるエヴァ・ジョリー候補(c)AFP=時事
脱原発を訴えるエヴァ・ジョリー候補(c)AFP=時事

 電源の8割近くを原子力に頼るフランスで、2012年春の大統領選は、原発の是非が初めて議論の対象となる選挙になりそうだ。それは、福島第一原発事故で安全性への関心が高まっているからだけではない。この国で長年泡沫扱いされてきた「緑の党」が、欧州統合推進勢力と合体して影響力を持ってきているからでもある。これらの勢力に多い脱原発派が大統領選のキャスティングボートを握る展開も、あり得ないわけではない。  10月22日、来日したフランスの政党「ヨーロッパエコロジー・緑の党」(EELV)の大統領候補エヴァ・ジョリー(67)が東京で記者会見を開いた。「私は、脱原発を訴える唯一の仏大統領候補です」と自己紹介し、20年後に原発を全廃する、との抱負を述べた。

2年前の欧州議会選でイメージを一新

 これまで左右を問わず原発推進で一致してきたフランス政界であえて原発廃止を訴え、しかも日本で会談した相手が社民党党首の福島瑞穂――。そう聞くと、EELVを「現実性の乏しい何でも反対の政党」と受け止めるかも知れない。実際、「緑の党」が大きな発言力を誇ってきたお隣ドイツと違って、フランスの「緑の党」は2年あまり前まで、そのイメージ通りの党だった。市民からもほとんど相手にされない存在にとどまっていた。
 2007年の前回大統領選でも、公認候補のドミニク・ボワネの得票はトロツキスト政党候補の半分にも満たない1.6%足らず。他国と同様、フランスでも緑の党の中心となってきたのは環境保護志向の強い都市住民で、農業国フランスのメンタリティーに合わないといわれてきた。
 こうした党のイメージを一変させたのが、2009年の欧州議会選だ。緑の党はこの選挙で単独の候補者リストをつくらず、「ヨーロッパエコロジー」という名の会派を結成して党外の人物を巻き込んだ統一候補者リストを作成した。ここに、欧州統合推進に熱心な著名人、文化人が次々と参加した。都会派、インテリ、学生運動経験者が多いという点で、環境保護派と欧州統合推進派は多くの要素を共有しているからだ。

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