ラブロフ外相の喫煙外交

執筆者:名越健郎2011年11月10日

 ロシアのラブロフ外相が近年、北方領土問題で反日発言を繰り返しており、「外相がこれでは、動きようがない」(日本外務省幹部)といった恨み節が聞かれる。

 確かに、ラブロフ外相は近年、「日本が第2次大戦の結果を認める以外に道はない」「4島へのロシアの主権は国際法で確認されている」などと強調。昨年11月のメドベージェフ大統領の国後島訪問についても、「これはロシアの領土だ。ロシア大統領がロシアの領土、地域を訪問したにすぎない」と開き直り、大統領の色丹島視察の可能性にも言及した。

 今年10月には、ラジオインタビューで、ロシアが北方領土を自国領とする根拠として、「国連憲章107条(敵国条項)に単純明快に記されている」と述べた。外相は10年間国連大使を務めており、国連憲章には詳しいが、ほとんど死文化している敵国条項まで持ち出すのは異常だ。

 外交筋によれば、近年は日露の外交官同士が夜、一緒に食事することもないという。1990年代には日露外交官同士が親密だったが、これでは交渉も進むはずがない。これもボスの反日志向の影響かもしれない。

 ラブロフ外相は2004年の就任当初は対日外交に積極的で、「領土問題に真剣に取り組む」などと公言していた。それがなぜ、ここまで悪化してしまったのだろうか。外相が04年秋、テレビ番組で、歯舞、色丹の2島返還による解決策を提案し、日本側にあっさり蹴られたことに激怒したとの説もある。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。