安全保障から見たTPPの本質

執筆者:2011年11月14日

   防衛力の存在は、「国の平和と繁栄の礎」と言われてきた。平和があってこそ繁栄もある、という論理だ。だが平和は、繁栄の必要条件であっても十分条件ではない。    今日、核による相互確証破壊よりも、国債の投げ売りによる経済の相互確証破壊が囁かれるようになった。EUはなりふり構わずギリシャを救済し、中国は人民元切り上げを頑なに拒否、米国はドル安を放置してTPPで起死回生を狙っている。世界は、かつて第2次世界大戦を引き起こしたブロック経済化の様相すら呈している。    世界の安定は、核と為替の均衡の上に成り立っていた。いま、核が恐怖の均衡から縮小均衡に向かう一方、為替の暴走を止める手立てはない。それは、投機マネーというグローバルな「非国家主体」が、核に代わって世界共通の脅威となったことを意味している。    投機マネーは、国家主体が市場に際限なく通貨を供給することによって生まれる。最大の供給元は米国だ。第2次大戦後、米国は世界の生産品を買い支え、世界経済を復興させた。冷戦期には、米国の軍事プレゼンスと経済援助が、自由主義世界の安定と繁栄を支えてきた。その結果、米国には膨大な債務が、各国におけるドル建ての外貨準備として積みあがっていった。米国は、世界の警察官であると同時に、世界の中央銀行でもあった。

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