ブータン国王の来日と中国インテリジェンス

執筆者:春名幹男2011年11月21日

 国賓として来日したブータンのジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王(31)とジェツン・ペマ王妃(21)。国賓として初来日、15日から20日まで東日本大震災の被災地、福島県相馬市などで大歓迎を受けた。人口わずか70万人。ヒマラヤ山中の小国で先月チベット仏教式の結婚式を挙げたばかりのお二人の姿から、現代のおとぎ話を見るような印象を持った日本人も多かったのではないか。
 しかし、行く先々でお二人をかいがいしく案内していたチベット出身のペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学法学部教授(58)の姿を見て、ハッとした。同時に、中国が神経をいらだたせ、方々でひそかにインテリジェンス活動を展開したのではないかと想像してしまった。
 南アジア情報筋によると、ペマ・ギャルポ氏はダライ・ラマ14世とは直接それほど近くはないが、実兄はダライ・ラマ師の在米代表のような存在、という。
 ブータンが置かれた状況はネパールと比較すれば分かりやすい。ネパールでは2001年、宮廷クーデターで国王が皇太子に殺害されて以後、内政が混乱して、結局王朝は崩壊。現在も親インド勢力と親中勢力などの対立が続いている。
 対照的に、ブータンはネパール系住民による民主化運動があったものの、現在は国王に65歳定年制が設けられるなどして立憲君主制が確立、インドとの緊密な関係を維持している。米中ロ3大国とは国交がなく、非同盟を貫いている。「最小不幸」の菅直人前首相とは全く逆アプローチだが、「国民総幸福量」の推進を憲法でうたい、親日的だ。
 小国の元首を日本がハネムーンにと国賓として歓待した政治的意図は明らか、などと言うのは無粋、ではある。
 

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