円高は収まる気配がないが……(c)時事
円高は収まる気配がないが……(c)時事

 一向に収まらない円高に対して、政府・日銀は円売りドル買い介入を繰り返している。10月31日には、民主党政権になって4度目となる介入を実施。8兆円規模というこれまでにない大型のものだった。昨年9月、今年3月、8月、そして10月の4回合計の介入額は15兆円を超えた。  さらに政府は、2011年度の第3次補正予算で約2兆円にのぼる円高対策を盛り込んだ。具体的には生産・研究開発拠点を日本国内に置いた場合に補助金を支給する立地補助事業や、中小企業向けの緊急保証・特別貸付などだ。円高による産業空洞化や雇用喪失を防ぐとしているが、直接的に円高を止める政策というよりも、円高で苦しむ企業への“支援”といった側面が強い。

止まらない円高

 こうした対策にもかかわらず、円高は止まらない。為替介入すればその直後には円高は一時的に修正されているが、すぐに息切れ。中長期的な円高傾向には歯止めがかかっていない。民主党への政権交代が決まった2009年8月末の段階では1ドル=93円前後だったが、現在は1ドル=77円前後。2年余りで2割近くも円高になったことになる。
「各社の為替影響額は極めて大きく、乗用車8社合計で2011年4-9月期に約3300億円にも膨れ上がり、業績に大きな重しとなっている」
 日本自動車工業会会長の志賀俊之・日産自動車COO(最高執行責任者)は定例会見で、円高に伴う“被害”を強調した。そのうえで、政府にさらなる円高対策を取るよう求めた。日本経団連など他の財界団体も異口同音に円高対策を要望している。
 だが、円高対策が焦眉の急という現下の状況の中で、野田佳彦内閣の周辺では円安を警戒する声が急速に強まっている。
「もちろん円高対策は重要だが、本当に怖いのは円安に振れ始めた時だ」とある経済閣僚は小声で言う。同様の発言をする議員が、このところ官邸周辺に増えているのだ。

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