慌ただしい年末の27日、野田内閣は植松信一内閣情報官と伊藤哲朗内閣危機管理監を退任させる人事を突然決定した。
金正日総書記死去の発表直前、新橋での街頭演説に出かけてしまい、急きょ戻って、恥をかいた野田首相。「重大発表の予告」を野田佳彦首相に緊急連絡しなかった、として、両氏は責任をとらされたのではないか、との推測が広がった。真相は闇の中だが、藤村修官房長官は記者会見で「更迭」との見方を否定したという。
自民党の石原伸晃幹事長は「トカゲのしっぽ切りだ」と批判した。野田首相は「危機管理能力のなさ」を責任転嫁したのがこの人事、というのが自民党の主張である。
だが、「更迭」か「トカゲのしっぽ切り」か、そんな論争は当を得ていない。
北朝鮮情勢がなお流動的なこの時期に、情報機関と危機管理体制のトップをなぜ交代させたのか、が最も重要な問題である。引き継ぎなどに余計な時間を取られてしまい、その間にまた緊急事態が発生したらどうするのか。
「日本にはまともな情報機関がない」などと批判されてきたが、内閣情報官は内閣情報調査室のトップ。首相を情報面で支え、防衛省情報本部、公安調査庁、公安警察などのコーディネーターとしても重要な任務を担っている。情報機関の強化策を何も実行せず、こんな時期に重要人事を発表するのはなぜか。そんな質問をぶつけるメディアもないようだ。

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