ニューデリーなどで見られた違法建築の破壊命令などと同様に、法治主義の国インドではしばしば政治が重要な判断を司法に丸投げし、裁判所も経済社会の「空気」を読まずに独自かつガチンコの判断や命令を下す、という定番劇が演じられてきた。インド最高裁は2月2日、政府が携帯電話サービス・プロバイダー11社に発給した122件の2G(第2世代) 携帯電話ライセンスを取り消す判決を言い渡したのである。
 この事件は2008年当時のA・ラジャ通信・IT相(2010年に汚職疑惑で辞任、翌11年に逮捕)のライセンス認可が「恣意的かつ違法に」行われ、国家に損失を与えた、という告訴に基づき、司法当局が審理していたものだ。汚職事件自体は、与党国民会議派の大物政治家・チダムバラム内相をも巻き込みかねない勢いで捜査が進んでいるが、今回のライセンス取り消しによって、08年に大挙市場に参入したノルウェー系のユニノール、ロシア系のシステマ、UAE(アラブ首長国連邦)系のエティサラット、そしてNTTドコモも資本参加しているタタ・テレサービシズなどが多大な影響を受けることになりそうだ。
 合弁パートナーの印不動産会社ユニテックとの内紛が指摘され、事業の立ち上げで苦労しているノルウェーのテレノールは、「営業継続と投資保護のために戦う」と表明。外交ルートも動員してインド政府に対応を求める考えを示した。タタ・テレサービシズも「わが社は不正とは無関係」として最高裁に再審を請求する考えを明らかにしている。システマなどもこれに追随すると見られる。

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