英王室の存在感

執筆者:徳岡孝夫2012年2月21日

 先の大戦中も家族と共にドイツ空軍やロケットの猛攻下にあったロンドンに留まり英国民の士気を鼓舞した。そういう勇敢な国王ジョージ6世は、戦後の1952年2月にイングランド東部ノーフォークでの狩猟中、急病で亡くなった。後を継いで王女エリザベスが即位した。ちょうど60年前のことである。今年は、そのダイヤモンド記念。  先日、エリザベス2世は、そのノーフォークに父王急逝の跡を訪ねた。それは今年のめでたい「イングランドの春」を5カ月がかりで祝う「女王即位60年」記念行事の幕開きを告げる儀式の始まりでもあった。    昭和天皇の御治世は、戦前から戦後にまたがり、大正時代に摂政をされた期間を数えずとも64年間だった。今年のエリザベス2世は僅かに及ばないが、国家の象徴である方の長寿は何を意味するか?   それは、その国の歴史と文化が、ずっと昔から存在し、今後も長く続くことを示唆する。歴史の重さに欠ける共和制の国が、逆立ちしても得られない、それは君主制の効用である。  翌1953年6月2日には、若々しい女王の戴冠式がロンドンで行なわれた。「昨日の敵」である日本にも招待状が来て、皇太子(いまの天皇)が海路行かれた。イギリス人は冷ややかに迎えたが、1905(明治38)年の日本海海戦に勝利を収めた日本の賢明な用兵を記憶している首相チャーチルは、遠来の皇太子を手厚くもてなした。

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