イエメンの暫定大統領就任で民主化は進むか

執筆者:池内恵2012年2月26日

 2月21日に行われたイエメンの大統領選挙で、唯一の候補だったハーディー副大統領(Abd-Rabboh Mansour Hadi)の当選が24日に発表され、25日には早くも就任式が行われた。

http://www.nytimes.com/2012/02/26/world/middleeast/abed-rabu-mansour-hadi-sworn-in-as-yemens-new-president.html?_r=2&ref=global-home

  これで1978年の北イエメン大統領就任以来権力を握って来たサーレハ(Ali Abdullah Saleh)が大統領の地位を公式に退いた。ハーディーは2年任期の、移行期の暫定大統領とされる。

 昨年1月27日、エジプトと並行して勃発した大規模デモが持続・恒常化し、主要都市が圧倒的な数の反政府抗議行動で埋まる一年間を経た(一人のノーベル平和賞受賞者まで生みだした)イエメンの体制動揺を、終息させることになるとは思えない。

  実質上の「単一候補」を国民に示し「信任」投票を迫るという手続きは、サッダーム・フセイン(イラク)、ムバーラク(エジプト)、アサド父子(シリア)な どアラブ諸国の「共和制」諸国の政権が常套手段にしてきたもので、サーレハも同様の選挙を繰り返し、33年にわたって大統領を続けてきた。新大統領のハー ディーは、17年間サーレハの下で任命制の副大統領を務め、昨年11月にはサーレハから権限を委譲され大統領代行を務めてきた。最低投票率も定められてお らず、「ボイコット」も不可能な、選択の余地が極めて限定された選挙だった。発表された「得票率99・8%」というのもそれらの独裁政権の選挙と似通っている(投票率は64.8%とされている)。

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