市場はすでに飽和化している(c)時事
市場はすでに飽和化している(c)時事

 中国の自動車市場の拡大が止まった。昨年の販売台数は1850万5100台と3年連続で世界最大の市場となったものの伸び率は前年比2.4%増。かろうじて増加は維持したが、2009年の46.2%増、10年の32.4%増に比べ、急ブレーキがかかった。さらに年明け1月の実績は、前年同月比26.4%減という急激な落ち込みとなった。中国の国内総生産(GDP)伸び率は11年も9.2%と高成長を保っている。10年の10.3%より減速したものの、09年の9.2%を上回っており、決して需要が落ちるマクロ経済状況ではない。そのなかで、自動車市場の伸びはなぜ止まったのか。そこに中国経済に潜む巨大なリスクが顔をのぞかせている。

じつは09年と10年だけが突出していた伸び率

 中国の自動車販売台数は1999年の183万台から毎年、着実に伸びてきたが、その伸び率は08年までは高い年で03年の35.1%増、低い年では08年の6.7%増にすぎなかった。03年の増加率は高くみえるが、前年への上積み分は87万台にとどまる。それに比べて09年の前年比の増分は426万台、10年の増分は442万台であり、09年から10年にかけての中国の自動車市場の膨張ぶりが突出していることがわかるだろう。世界の自動車メーカーや素材、部品メーカーはその異常ともいえる膨張に目を奪われ、その延長線上に中国の自動車市場の将来図を描いてしまった。
 自動車各社は設備投資の拡大にアクセルを踏み込んだ。外資メーカーと中国国内メーカーの生産能力はすでに年産2500万台近い水準に達しており、今後、計画している新プラントがすべて予定通り立ち上がれば15年には4000万台にもなる。中国の汽車工業協会が米調査会社と共同で実施した市場予測では、中国の自動車市場はピーク時には「年間5000万台市場になる」という。自動車大国、米国が最も販売台数が多かった2000年の3倍にもなろうかという巨大な数字だ。冷静に今の中国人の平均的な収入や生活スタイルをみれば、そんなことが現実になると考える方が異常だが、10年に1800万台の大台を突破した際には、そうした予測があまりに楽観的であることにほとんどの人は気付かなかった。

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