大統領選前にプーチン批判の暴露本

執筆者:名越健郎2012年3月1日

  プーチン首相の当選が確実な3月4日投票のロシア大統領選を前に、モスクワで活動する女性記者マーシャ・ゲッセンのプーチン批判本『顔のない男-ウラジーミル・プーチンの異例の台頭』(ペンギンブックス)が米国で発刊され、欧米で話題になっている。

 ロシア生まれのゲッセンは1980年代、両親とともに米国に移住。米大学を卒業し、90年代に記者としてロシアに戻ってきた。現在はモスクワのネットニュースの編集をしながら、欧米の新聞にロシア情勢を寄稿している。

 いまだに謎の多いプーチンの実像を紹介しながら、プーチン時代に起きた奇怪な事件を独自取材で解剖。最近の反プーチン集会までを網羅し、「事実は小説より奇なりという言葉は、このノンフィクションには過小評価だ」(ニューヨーク・タイムズ書評)と高い評価を得ている。本書がロシアで出版されるなら、色褪せてきたプーチンのカリスマはますます低落するだろう。

 本書はレニングラードの労働者の家に生まれ、不良少年で、KGB(旧ソ連国家保安委員会)の冴えない中佐だったプーチンが、いかにして最高権力者となったかを解き明かす。プーチンが2000年の大統領選前に出版したモノローグ『第一人者』を軸に、関係者の証言から同書には嘘が多いことを指摘する。

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