「カラチのお坊ちゃま」「ミスター10%(大臣在職中に関連予算の10パーセントを着服していると噂され)」「妻(故ベナジル・ブット元首相)の威を借る素人政治家」――。その経歴や言行、印象からもっぱらネガティブな形容詞が付きまとってきたパキスタンのザルダリ大統領(56)が4月8日、インドを初訪問した。パキスタン大統領の訪印としても2005年のムシャラフ前大統領以来7年ぶりとなった。西部ラジャスタン州アジメールのイスラム教聖者廟を参拝するため、というのが「公式」の目的だったが、ザルダリ氏はニューデリーでシン印首相との首脳会談に臨み、インド側が印パ和平プロセス本格再開の「条件」としているイスラム過激派対策の強化や、印パ二国間の貿易・投資問題など経済協力などについて協議したとみられる。
 わずか半日のインド滞在ではあったが、さまざまなタイミングを計った今回の訪印は、十分なインパクトがあったといえるだろう。

盛り上がる経済協力機運

 パキスタン政府は印パ二国間貿易拡大の切り札となるよりオープンな「ネガティブリスト(明記された品目以外は輸入を許可する、という貿易規制)方式」の適用を決定、年内にインドに最恵国待遇(MFN)を供与することも表明している。これを受けて、双方はビジネスビザの発給緩和や両国大手銀行による支店の相互開設認可などを改めて打ち出した。パキスタン政府はインドからの石油製品輸入の解禁を表明。ザルダリ氏の訪印直後には、インド政府がパキスタン企業による対印直接投資(FDI)を原則認可すると発表した。これとほぼ同時期にパキスタンのアパレル、家具メーカーや宝飾品業者はニューデリーの国際見本市会場プラガティ・メイダンで「パキスタン・ライフスタイル展」を開催し、大いにインド側バイヤーらの認知を得た。

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