米国の指導力の陰りを印象づけた米州サミット

執筆者:遅野井茂雄2012年4月23日

 4月14-15日、コロンビアの保養地カルタヘナで開催された第6回米州サミットは、キューバの参加問題等をめぐりアメリカと中南米諸国の溝の深さと、米州における米国政府の指導力の低下を、これまでになく際立たせるものとなった。

 まず会議は、オバマ大統領の警護に当たった米軍のシークレットサービスがナイトクラブで遊興の末、売春婦をホテルに連れ込むという場外スキャンダルが話題をさらう異例の幕開けとなった。関係者11人は開幕を前に本国へ帰還を命じられたが、不祥事を重く見たオバマ政権は内部調査の結果、報道によれば20日までに、関わった9人の軍人を警護局から解任するに至った。米軍をめぐるスキャンダルがサミットでの米大統領の面子をつぶすところまで及んだ形であり、懲戒の対象者はさらに増える模様で、米国内での波紋はおさまらない。

 今回サミットを取り巻く環境は、米国初の黒人大統領を迎えた3年前の親和的なムードとは一変していた。米州外交のデビューとなった前回、オバマ大統領は、ブッシュ政権下で反米政権が出現するなど中南米で失われた信頼を取り戻すため「新たなパートナーシップの構築」を謳い上げることで、単独行動主義から多国間協調の姿勢を示し、各国の期待感をとり止めることに成功した。しかし今回は、キューバの参加問題、麻薬対策、マルビナス(フォークランド)問題という、国内的影響を考慮せざるを得ない厳しい争点が前面に出され、大統領選挙を控えるオバマ政権は決断ができなかったといえる。事前の外相会議でも調整がつかず、最終宣言の原案が準備できない中でのサミット開幕となった。

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