来たるべき習近平政権の華僑・華人政策

執筆者:樋泉克夫2012年5月29日

 4月9日、世界の110ほどの国や地域で活動している華僑や華人組織の代表者600人ほどを集め、中国政府部内にあって華僑・華人対策を実質的に執行している国務院僑務弁公室と中国海外交流協会とが共同で「第六届世界華僑華人社団聯誼大会」を開催した。

 華僑といい華人というが、共にルーツは漢民族。現在の中国の公式的見解に従えば、華僑とは「海外に住む中華民族で中国公民(=中国国籍保持者)」であり、華人は「海外に住む中華民族とその末裔で既に中国公民の立場を離れ外国の国籍を保持している者」となる。中国公民である華僑が海外で不利益を被った場合には、中国政府は援助の手を差し伸べるが、華人は既に法的には外国人であるゆえに、不当な立場に置かれようと中国政府は関知しない。だが華人の側が望むなら、中国政府は歴史的・民族的立場に立ち、彼らに援助の手を差し伸べるのも吝かではない。かくして彼らを一括して「海外僑胞」と呼び、「自己人(なかま)」として扱うわけだ。

 その名称からするなら、世界華僑華人社団聯誼大会とは中国系海外在住者の新旧世代の単なる親睦団体のようにも思えるだろう。だが、主だった大会参加者の顔ぶれをみると、多くは1970年代末に鄧小平主導で踏み切った対外開放以後の海外移住者、いわば対外開放が生み出した新しい世代の華僑であり華人といってもよさそうだ。  

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