外国人登録証を不正に入手した在日中国大使館の李春光1等書記官の事件。警視庁公安部が5月31日、彼を外国人登録法違反などで書類送検し、捜査を終了した。大手各紙は1日まで、大きく報道したが、2日、このニュースは紙面から消えた。

  この事件で日本の大手メディアは、中国が日本政府の機密情報入手に狙いを定めているかのような報道をしてきた。しかし、現実はそれほど単純ではない。

 このままだと、中国が日本で行なっていると想定される工作が誤解される恐れがある。後述するが、中国は秘密の情報収集工作に加えて、広範な分野でいわゆる秘密工作(covert operation)も展開していることを、あえて指摘しておきたい。李書記官は末端でそうした工作に従事していた疑いがあるからだ。

 これまで明らかになった情報から総合すると、本人は元々人民解放軍参謀第2部所属の情報機関員で中国外交部(外務省)から「外交官カバー」を得ていたようだ。つまり、軍のスパイが外交官に偽装していた、とみることができる。

 こうしたやり方はどの国の情報機関でも採用している。彼が、外国人登録証を更新していたのは、恐らく大使館での任務から外れて人民解放軍の工作に従事するためであっただろう。

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