インドに「地方の時代」の予感

執筆者:山田剛2012年6月11日

 2011年度のインドのGDP成長率は、前年度比6.5%と、常に8-9%の高成長を期待する日本など諸外国やインドのエコノミストたちをやや失望させた。だが、ほぼ同時に発表された各州のデータを見てみると、個性的な州首相(チーフ・ミニスター=県知事に相当)がリーダーシップを発揮する主要州はもちろん、これまで後進州の地位に甘んじていた東部諸州の急成長ぶりが目立っている。外資導入や産業・輸出振興政策で後手に回ることが多い中央政府を尻目に、有力各州は即断即決で大企業に工場用地を提供したり、独自のインフラ整備を進めたりしている。最近は日本企業のインド進出ラッシュを背景に、多くの州が「日系企業専用の工業団地」造成計画を打ち出すなど、放任主義から外資フレンドリーへと政策転換を図っており、日本勢にとっても追い風だ。

レッド・テープからレッド・カーペットへ
 こうした有力州の筆頭が西部グジャラート州だ。アラビア海に面しパキスタンと国境を接するロケーションで、古くから繊維工業の集積地として栄えた。2001年からは中央での最大野党・インド人民党(BJP)の次期首相候補と目されるナレンドラ・モディ氏(61)が10年以上にわたって州首相を務める。州内総生産(GDSP)は09-10年度の2年連続で10%超を記録した。最近では西ベンガル州を撤退したタタ自動車や米フォードの誘致に成功。5月にはマルチ・スズキも工場用地取得契約を締結した。昨年11月には中心都市アーメダバード郊外に日系企業専用工業団地を造成する計画を発表している。「経済成長を成し遂げるには投資環境を整備すること。そのためにはレッド・テープ(官僚主義)を改め、レッド・カーペット(優遇)を実施することが第一だ」とは最近のモディ氏の弁。

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