アフリカの“アフガニスタン”

執筆者:平野克己2012年6月14日

 4月6日、マリ北部が「アザワド国」として独立を宣言した。フランスのファビアス外相はこれを「アフリカのアフガニスタン」と形容している。

 独立を宣言したのはアザワド解放国民運動(MNLA)と呼ばれる、昨年結成されたばかりの武装組織だ。アザワドとは、マリ北部からニジェール北西部、アルジェリア南部に広がるサハラ砂漠の盆地を指し、かつての大交易都市トンブクトゥを含んでいる。現在トンブクトゥはMNLAの支配下だ。

 MNLAはトゥアレグ族の組織である。トゥアレグはもともとサハラ砂漠の交易遊牧民で、人口百万人ほどのムスリムの民だ。その居住地はマリ、ニジェール、アルジェリア、リビア、ブルキナファソに跨っている。インディゴで染めた青い伝統衣装から「青い民」とか、ラクダに騎乗した勇猛果敢な戦闘能力から「砂漠の支配者」とか呼ばれてきた。

 トゥアレグはこれまでも何度か、マリやニジェールで独立を求めて反乱を起こし、その度に鎮圧されてきた。1970年代80年代の大旱魃で極度な貧困に追い込まれたが、カダフィに拾われて多くがリビア軍入りし、重用されたらしい。リビア政変後マリに帰国したトゥアレグ兵士がMNLAを創設したのである。

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