ロシアが金正恩政権に接近工作

執筆者:名越健郎2012年6月18日

 ロシアがこのところ、北朝鮮の金正恩政権への接近を図っている。両国関係は金正日総書記の死後、凍結気味だったが、接近工作はプーチン政権のアジア太平洋外交活発化の一環とみられる。

 6月15日のタス通信によれば、ロシア非常事態省は大干ばつに見舞われている北朝鮮に対し、小麦672トンを提供した。国連世界食糧計画(WFP)の支援計画の一環で、今後も食糧支援を継続するという。米国が北朝鮮のミサイル発射で栄養食品提供を中止しており、肩代わりする狙いがあるようだ。

 ロシアは昨年夏、北朝鮮に小麦5万トンを提供。久々の食糧支援が8月末の故金正日労働党総書記の訪露につながった。今後、金正恩政権との関係構築を図る布石とみられる。

 6月1日の平壌発のタス通信によると、朝露両国は旧ソ連時代の債務返済問題で合意に達し、協定に仮調印した。ロシアのストルチャク財務次官が訪朝し、双方は債務問題での相互の義務履行で合意したという。

 昨年8月の朝露首脳会談は、債務問題の早期決着で合意していた。具体的内容は公表されていないが、双方は先に、北朝鮮の累積債務総額を110億ドルとし、9割を帳消しにして、残る1割は両国の共同プロジェクトなどに充てるとしていた。債務問題解決で、新たな投資への道が開かれる。

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