ユーロ圏の「南北問題」とオランドの舵取り

執筆者:渡邊啓貴2012年6月28日

 経済成長を主張するフランス・オランド政権の誕生で、緊縮財政一辺倒から潮目が変化しつつあるかに見えた欧州の経済政策の動きだが、事態はやはり容易ではない。
 筆者は緊縮政策と経済成長路線重視の政策を対立したものと考えてはいない。それはむしろブレーキとアクセルの関係といったほうがよく、バランスをとりながら調整していくものである。そしてその場合、ガソリンをどうするのか。オランドはそれを欧州投資銀行の拠出枠拡大、EU構造調整金からの調達、国際金融取引税導入、ユーロ共同債の発行などに求める。とくにユーロ共同債の発行となると、ドイツの負担が当然見込まれる。
 一昨年以来のギリシャの財政危機は、アイルランドやポルトガルに一時波及した。財政緊縮派政権が誕生して一息ついたかに見えたギリシャであったが、6月17日財政緊縮派サマラス党首率いる「新民主主義党(ND)」が第1党となって連立内閣組閣の見通しが立った翌日の株式市場は、僅か半日で悲観的見通しに逆戻りした。市場は依然として事態を好感していない。
 2009年秋に端を発するギリシャの財政危機以後のユーロ圏の不安とあわただしさはここにきていっそう拍車がかかってきている。ギリシャにとどまらず、イタリア・スペインというユーロ圏第3位、第4位の国にまで危機は波及している。

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