水銀ミルク事件と中国企業の対外説明

執筆者:野嶋剛2012年6月27日

 中国の乳製品で二番手の大手で内蒙古に本社を置く伊利実業グループが生産する粉ミルクに、「異常な」水準の水銀が混入したため、伊利は中国全土に出回った同社の粉ミルクを自主回収した。このとき、同社が対外的に発表した声明の内容があまりにもひどいということで、消費者の怒りを買った。

 手元にある声明によると、「・・・産品の水銀含有量に異常が見られ、我々は即座に検査を行った。国内外には、乳製品に含まれる水銀の量についての制限が決められていないが、我が社は消費者に対する責任を重んじ回収を始める・・・」

 注目を集めたのは、「水銀の量についての制限が決められていないが」というところと、一言も謝罪の言葉がなく、自己弁護と自己賞賛ばかりだったこと。中国の人々は反発して、同社の株は取引停止になるほど市場で値を下げた。

 確かに、文面から独占大企業のおごりのようなものがにじみ出ていると感じる。伊利集団といえば、内蒙古自治区の看板企業の一つ。地元政府からのあつい庇護も受けているのだろうと想像していたら、自治区の「質量監督局」というところの副局長が「国内外には、乳製品に含まれる水銀の量についての制限が決められていないが、企業が自主的に回収して原因を調べることには、肯定と支持を与えなくてはならない」という共産党的ボキャブラリーで讃辞を贈っていて、あまりにはまっていて笑えた。

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