インド北部、東部、東北部の計21州で7月30~31日の2日間にわたって数時間から最大20時間に及ぶ大規模停電が発生、各地で電車が運行を停止し、道路では交通信号が消え、一部地域では水道も止まるなど、総人口の半数近い約6億人の生活に大きな影響が出た。送電は8月1日朝までにほぼ復旧したが、影響人口の規模では世界最大級となったこの大停電は、未整備なインフラのまま疾走を続けてきたインド経済にとってはいくぶん遅すぎた警告となった。7月中旬に起きたマルチ・スズキ社マネサール工場での大規模暴動に続いて、インドにおけるリスクがまたひとつ顕在化した格好だ。
 

主因は電気の「過剰利用」か

 停電の原因には様々な要因が指摘されているが、石炭・天然ガスの供給不足やモンスーン期の降水量不足によるダムの水位低下、メンテナンスなどで各発電所の稼働率が下がっていたことに加え、経済活動はそこそこ活発で市民の生活水準も向上もあって電力消費が相変わらず高水準で推移していたこと、そして一部州が電力省の警告を無視して過剰な電力消費に走ったことなどが主な原因と見て間違いないだろう。

 ここ数年の電力事情を考えると、いままでこうした大規模停電が起きなかったことの方が不思議だ。

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