大阪維新の会の国政進出がどうなるのか、誰が新党に参加するのか・・最近の政治報道は日々そんな話ばかりだ。
 マスコミから筆者にお問い合わせいただくことも多いが、筆者は生憎、政治的なことは全く与り知らない。大阪府・市の特別顧問を務めてはいるが、あくまで府・市の行政をサポートする立場だ。
 
 ただ、ここ数カ月で大阪府・市のやってきたことをみると、「国に任せておけないので、大阪で先行してやってしまった」ということがいくつかあった。
 例えば、公務員制度改革がそのひとつだ。
 おそらく、改革の過程で「国に任せておけない」と認識したことが、国政進出を目指す原動力となったことは想像に難くない。また、国政進出したら何をやるのかと想像をめぐらすうえでも、大阪で先行実施されたことは、重要なヒントになるだろう。
 
 大阪府・市でダブル選挙以降に実現した公務員制度改革(教育公務員を含む)を並べてみると、ざっと以下のようなものがある。
1)「職員基本条例」の整備: 府議会では3月、市議会では5月に成立。
2)「教育基本条例」の整備(正式には、「教育行政基本条例」と「学校活性化条例」): 7月までに、府市ともに条例制定が完了。
3)市では「政治活動規制条例」「労使関係適正化条例」の整備: いずれも7月議会で成立。
4)市の区長公募: 「職員基本条例」で定める幹部公募をいわば先取りして実施。8月から公募区長が業務スタート。
5)市職員の給与カット(府では、橋下知事時代にすでに実施)
 
 マスコミ報道などでは、「公務員制度改革」=「給与カットなど、公務員の待遇引下げ」と捉えられがちだが、大阪府・市の場合、そこにとどまらず、「制度」の改革に踏み込んでいることがポイントだ。
・「住民のため、頑張ってよい仕事をすれば、報われる人事制度にする」、
・「幹部ポストには、内部の人材を順送り昇任させるのでなく、内外から優れた人材を公募する」、
といった、国でも長く課題とされてきた制度改革が、条例として整備された。
 つまり、単なる「公務員イジメ」のような感覚ではなく、行政組織をきちんと機能させるための改革にしっかり取り組んでいる、ということだ。
 
「公務員」というと見落とされがちだが、公立学校の教員も公務員だ。教員についても、上記と同様の視点で、措置が講じられている。
 たとえば、一般の行政組織での「幹部公募」に相当するのが、「校長の公募」だ。
 
 従来の公立学校の組織では、文部科学省-教育委員会-学校という縦系列の中で、誰が責任者なのか不明確な、いわば無責任体質の問題があった。
 大阪の「学校活性化条例」では、
・校長を学校運営の責任者と位置付け、そのための権限をできる限り与え(例えば、人事権は、法律上教育委員会の権限とされているので、これを校長に与えることまではできないが、校長の意見具申を尊重するよう条例で定めている)、
・その一方、優秀な人材を校長にあてるため、民間人材を含めて公募を行うことが定められた。
 
 大阪市では、7月の条例成立を受けて、さっそく「市内の公立小中学校の校長50人公募」を実施中だ(8月13日から9月10日まで)。
府ではすでに来年度に向けて府立学校の校長20人の公募を実施済みだが、「50人」となると、さらにインパクトは巨大だ。
 いわゆる民間人校長の数は、現状では全国でせいぜい100人程度。元祖・民間人校長の藤原和博・東京学芸大学客員教授の言葉を借りれば、「どれだけ画期的なことか」分かるのでないか。
 
 8月30日には、藤原氏が説明者となって、東京での説明会も開催された。
 大阪市の校長募集に東京で説明会というだけでも画期的だが、内容も型破りだった。筆者も傍聴させてもらったが、藤原氏によるミニ・ワークショップあり、鈴木寛・参議院議員の飛び入りありと、役所主催の説明会とは到底思われない、面白く意義深いものだった。
 
 説明会の様子は、ここで見ることができる。
 
 もちろん、「50人」公募したからといって、みな「民間人」になるわけではない。藤原氏も指摘しているように、「公募することによって、教員も刺激を受ける。若手教員も手をあげられるようになる」ということが重要だ。
 
 おそらく、この1~2年で、大阪の公立学校は大きく変わる。さらに数年後には、大阪で生まれた「新しいタイプの校長」たちが日本中に散らばり、大阪での成果を広めていくことになるのでないだろうか。
 
(原 英史)

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