続、領土問題とナショナリズム

執筆者:平野克己2012年10月22日

 前回したお話に貴重なご意見と質問をいただいた。ことがことだけに、かっこよくいえば勇気を奮って、その実内心はビクビクしながら書いたので、冷静な反応を頂戴したことはとても嬉しい。

 日本の現状とアフリカとのアナロジーを一言でいうと、アフリカ大陸の国境線に関しては「19世紀帝国主義の産物で人工的なものにすぎない」という言われ方をするのに、同じ時代に確定した竹島や尖閣諸島の日本領有は「固有の領土」として説明されるという、その矛盾なのである。当時の中国や韓国の状況を考慮すれば、大日本帝国時代の領有を「恥じるところなし」といいきれるだろうか。

 次に民主主義とナショナリズムの関係である。そもそもこのふたつは、歴史的にきってもきれない関係にある。フランス革命は国民国家(nation state)のナショナリズムと民主主義を同時にうみだし、その後の国民国家は民主主義と帝国主義のあいだを揺れ動いた。そのことはドイツをみればよくわかる。強烈なドイツ民族主義がドイツをつくり、エスノセントリズム(自民族中心主義)にまで増幅して、異民族支配やユダヤ人殲滅を正当化した。宗主国の民主主義やナショナリズムの矛盾を突いたのが第二次大戦後の植民地独立であって、異民族支配は否定されることになったのだった。民族が独自の国家を要求するとき、建国後のリーダーは民族の意思でしか選べない。つまり、民主主義システムしか国のなりたちを正当化できないはずなのだ。どのような独裁者も、最初は選挙で選ばれる。

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