次期大主教に決まったウェルビィ師 (C)AFP=時事
次期大主教に決まったウェルビィ師 (C)AFP=時事

 英国国教会(聖公会)の頂点に立ち全世界に8000万人の信者を誇る全聖公会(アングリカン・コミュニオン)を率いる次期カンタベリー大主教に、主教歴わずか1年のジャスティン・ウェルビィ主教(イングランド北部ダラム教区、56歳)が任命された。聖アウグスティヌスから105代目となる次期大主教は、石油業界で活躍した異例の経歴を持つ。ローワン・ウィリアムズ現カンタベリー大主教(62歳)の10年間で大揺れに揺れた教会を立て直すため、実業界で培った次期大主教の手腕に期待が集まるが、ウェルビィ師任命は教会の抱える問題の根深さを物語っている。 

170カ国、8000万人の信者

 英国国教会が誕生したのは16世紀。当時のイングランド王ヘンリー8世が、宮廷に仕える女性、アン・ブーリンと結婚したいがためにキャサリン妃との婚姻の無効(離婚が許されないために実質上の離婚をこう言い募る)を宣言して欲しいとローマ法王クレメンス7世に求めたもののかなわず、ローマ法王と決別して1534年に「首長令」を出してイングランド王、つまり自分が英国の教会の首長だと決めて独自のキリスト教会となったことから始まる。そして、英国の植民地拡大とともに世界に影響力を広げ、現在では約170カ国に聖公会の教会があり、総称して全聖公会と呼ばれる。
 チョーサーの「カンタベリー物語」で知られるカンタベリー大聖堂の主でもあるカンタベリー大主教は、英国のキリスト教会がローマ法王の傘下にあった時代は、法王が任命する各地の大司教の1人にすぎなかったが、英国国教会となってからは、国王(女王)によって同教会の最高位の聖職者として任命されるようになった。
 17世紀の名誉革命後は、教会に対する国王の実質的な権限は失われ、そのほとんどは首相に移された。現在は首相の権限すら名目的なものになっている。今回の大主教選任の手続きを見ると、ウィリアムズ大主教の辞任表明を受けて聖俗双方の代表16人からなる委員会が候補を選考、女王に提言して承認を得て、デビッド・キャメロン首相が11月9日に発表するというプロセスを踏んだ。

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