フランスのオランド政権が導入を計画している富裕税を逃れようと、税率の低い近隣諸国に住所を移す金持ちたちが後を絶たない。高級ブランド世界最大手のグループ「LVMH」(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)の総帥ベルナール・アルノー氏がベルギー国籍取得を目指して顰蹙を買ったのは、9月21日の本欄「『ブランドの帝王』ベルギー国籍申請の怪しさ」で報告したが、今度はこれと比べものにならない大物だ。国民的俳優ジェラール・ドパルデュー氏がベルギーに引っ越ししたというのである。

 その引っ越し先は、ネシャンという小さな村である。フランス国境からわずか1キロのところに位置し、仏北部の大都市ルーベと近接している。村で話されているのはフランス語であり、欧州内の自由な往来を定めたシェンゲン協定に両国とも参加しているから、フランス側とネシャン村との間には、検問も税関もない。お隣に出かけるのと、何ら変わらない。

 しかし、そこがベルギー領内であるのは否定できない事実である。だから、オランド政権が年間100万ユーロ(約1億円)を超える所得に対して課そうとしている75%の富裕税も、ここでは無縁だ。ルモンド紙によると、ドパルデュー氏は12月7日、この村にある元税関事務所の建物を80万ユーロで取得した。ごく平凡に見える家だが、庭と広いプールが付いており、ドパルデュー氏は1年の半分をここで過ごす予定だという。

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