排除されてきたハマースが「主流化」「体制化」している(ガザを初訪問したミシュアル政治局長=中央左=と歓迎するハニーヤ首相=中央右=)(c)EPA=時事
排除されてきたハマースが「主流化」「体制化」している(ガザを初訪問したミシュアル政治局長=中央左=と歓迎するハニーヤ首相=中央右=)(c)EPA=時事

 2010年の12月17日、チュニジアの「寒村」と言っていいようなさびれた小都市で1人の青年が焼身自殺を図ってから2年。中東の政治は急激な変化の過程にあるが、その影響を深いところで受けるのがイスラエルである。南で国境を接するエジプトではムバーラク政権が倒れ、ムスリム同胞団主体の政権が誕生して権力基盤を築こうとしている。北の国境を接するシリアではアサド政権が混乱の中に崩壊しつつある。これによりイスラエルの置かれた戦略環境は激変した。11月にガザのハマースとの戦闘を行なったイスラエルだが、国際社会の非難も気にせず、米国の全面的な支持をたのみに、思いのままに掃討作戦を行なって目的を十分達成したうえで引き揚げるという、かつてのような「行動の自由」はもうない。

エジプトとの和平がイスラエルの安全保障の支柱

 イスラエルは1978年にキャンプ・デービッド合意を当時のエジプトのサダト大統領と結び、翌年にイスラエル・エジプト平和条約を締結したことで、南部の国境を安定させ、シナイ半島アラブ諸国との「2正面作戦」に備える必要がなくなった。ここから北部国境でシリアとレバノンに対して圧倒的に優位に立ち、1967年戦争で獲得したヨルダン川西岸と東エルサレムの占領地に入植地を広げていった。

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