「地元紙」で読む北方領土の現状

執筆者:名越健郎2013年1月6日

 正月休みに、北方領土の国後島と択捉島で発行されている地元紙をパラパラ読んでみた。昨年夏にビザなし渡航で両島を訪れた際、地元紙の記者と接触し、新聞を添付ファイルのメールで送付するよう頼み、有料で毎号届けてもらっているのだ。北方4島の人口は計1万7000人程度と狭い社会ながら、事件・事故も報じられ、興味は尽きない。本土のロシア人がどう住もうと勝手だが、60数年前に隣人が自宅の庭の一部を武力で奪い、その後も強引に住み続けているとなれば、彼らがそこでどんな暮らしをしているか関心を持たざるを得ない。

 国後島で発行されている地元紙は、『国境で(ナ・ルベジェー)』(На рубеже) 、択捉島で発行されているのは『赤い灯台(クラスヌィ・マヤーク)』(Красный маяк)。いずれも週2回発行のタブロイド版4ページ。発行部数は前者が1000部、後者が600部という。いずれも1947年に地区共産党機関紙として創刊され、今年が創刊65周年。宣伝扇動手段として新聞を重視した旧ソ連当局は、北方領土占拠2年で発行に乗り出した。国後と色丹向けの「国境で」の部数は70年代は3500部だったが、ソ連崩壊後に激減。同社は市場経済の中、記者をリストラしたり、広告を打つなど必死の経営努力を行なっていると聞いた。

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