昨年12月19日の韓国大統領選挙の直前に、韓国人の知人から「金正男(キム・ジョンナム)氏に関する日本での最近の情報はないか」と問い合わせがあった。

 そんな質問をしてきた理由を尋ねると、投票日を前に「金正男氏が密かに韓国に亡命していてソウルで会見をする」「韓国の放送局が金正男氏とインタビューに成功した。投票日直前に放映される」といった噂が韓国のネットを中心に出回っているという。

 しかし、韓国大統領選挙を前にそうしたことは起きず、すべてが根拠のない噂であった。

 この騒ぎは韓国大統領選が終わると、一過性の虚報として終わろうとしているが、北朝鮮にとって金正男氏とはどういう存在なのだろうか。

 

三代世襲批判で「潜伏」へ

 金正男氏は2001年5月に成田空港で妻子とみられる人たちとともに偽造旅券を使った疑いで拘束され、北京に強制退去処分になった。金正男氏はその後、マカオや北京を生活の根拠地にしてきた。最近では北京よりもマカオを生活拠点としていた。時々、海外のメディアの前に姿を現し、インタビューに応じるなどした。

 しかし、昨年1月に日本で金正男氏のインタビューとeメールをまとめた「父・金正日と私」という本が出版されて以降、その行方は分からなくなった。金正男氏は「北朝鮮の政権が、私に危害をもたらす可能性もあります」と指摘し、この時点でのこの本の出版に反対していた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。