「勝てば官軍」アベノミクスの3本の矢

執筆者:青柳尚志2013年1月25日
 安倍首相(右端)と「城下の盟」を結んだ白川日銀総裁(左端)(c)時事
安倍首相(右端)と「城下の盟」を結んだ白川日銀総裁(左端)(c)時事

 人食い、鬼、虎、怪物、暴君……皇帝陛下。1815年、ウィーン会議の最中にエルバ島から脱出し、パリに入城したナポレオンに対する当時のフランスの新聞による呼称の変遷である。安倍晋三首相の唱えるデフレ脱却策を当初、冷ややかにみていたエコノミストたちが、微妙に評価を変え始めた。勝てば官軍(Might is right.)ということだろうか。

 金融緩和、積極財政、成長戦略を3本の矢とする安倍氏の経済政策の力点は、前二者の金融・財政政策にある。1990年代のバブル崩壊後、何度も繰り返されてきた浦島太郎の政策だと皮肉る向きもあるが、今回は錦の御旗を掲げているようにみえる。円安と株高であり、経営者や投資家の心理の好転である。要するに世の中の雰囲気が明るくなったのだ。

 昨年10月には1ドル=70円台後半だった円相場は、今年1月18日には90円台に乗せた。同じく8000円台後半だった日経平均株価も、2011年3月の東日本大震災後の高値を抜き、2010年4月以来の1万900円台を回復した。何よりも野田佳彦前首相が党首討論で衆院解散の意向を表明した昨年11月半ば以降、外国人投資家による日本株の買越額は2兆円規模にのぼった。

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