ロシアを動かす「二人のイワノフ」

執筆者:藤村幹雄2004年10月号

プーチンと二人のイワノフの会合こそ、ロシアの最高意思決定機関だ。特に謎の男ビクトル・イワノフ補佐官は背後から大統領すら動かしている。[モスクワ発]「われわれは国際テロリストに宣戦布告された。外国にあるテロリストの拠点に先制攻撃を加えることは、正当であり、十分可能だ」 多数の児童を含む三百三十人以上が死亡したロシア南部北オセチア共和国ベスランの学校占拠事件の衝撃が続く九月九日、ロシアのセルゲイ・イワノフ国防相は知識人風の風貌を紅潮させて記者団に怒りをぶちまけた。プーチン大統領が四日の国民向け演説で「国防、安保でしかるべき措置を取っていなかった」と過ちを認めるソフトな対応が目立ったのとは対照的だった。しかし、盟友のこの二人は一心同体であり、巧みに役割分担しているのである。 クレムリン当局者によれば、八月二十四日の国内線旅客機二機の連続爆破事件後にロシアで続発する大型テロ事件を通じて、プーチン大統領、イワノフ国防相、それにビクトル・イワノフ大統領補佐官の三人が密談する場面が増えているという。「この三人は親しい友人であり、プーチン大統領は二人のイワノフを最も信頼し、何でも相談している。ロシアの最高意思決定機関はこの三人の会合だ」と同当局者は打ち明けた。大統領の最有力側近はイワノフ補佐官より格上のメドベージェフ大統領府長官や、大統領選対策本部長を務めたコザク官房長官とみられているが、実際には「二人のイワノフ」が大統領を支える屋台骨なのだ。

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