「着任発表は九月十一日付の朝刊でお願いします」――九月十日に着任した王毅新駐日大使は、赴任を前に北京駐在の日本記者団に要望した。いったん九月二十五日に延期との噂が流れ、その後十月九日の赴任を日本外務省に正式に申請するなど二転三転した。予定決定後に、台湾の李登輝前総統の訪日計画が浮上したからだ。 八月下旬、「李前総統の側近の意を受けた」として日華議員懇談会の平沼赳夫会長らが訪日への根回しを始めた。「かねて奥の細道を歩いてみたいと願っていた。家族とともに観光目的で九月下旬から十月初めにかけて訪日したい」と李前総統の意向を伝え、自民党・政府に働きかけたのだ。九月末にも予定される六カ国協議への影響などを理由に、外務省は猛反対した。 結局、李訪日は「早くても十二月の台湾立法委員選挙の後」で日本側の調整は一段落したが、王・新大使は依然ぴりぴりしている。「十一日付の朝刊……」と念を押したのも、ぎりぎりまで李訪日の行方を見定めるため。万が一にも李前総統が九月末に来日する事態になったら、中国は大使召還に踏みきる方向だという。

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