今年四月にアラブ社会初のダイヤモンド取引所を開設したUAE(アラブ首長国連邦)が、先ごろ不正取引をより厳しく監視する方針を打ち出した。 ダイヤモンドの生産は南アのデビアス社、加工ではイスラエル業者が圧倒的な支配力を持つ。本来、宝石や貴金属での資産運用が盛んな湾岸諸国だが、歴史的にユダヤ人社会と密接にかかわる分野だけに、取引所立ち上げにまで乗り出したUAEは例外的な存在だ。 特に注目されるのは、UAEが連邦法を発布して「キンバリー協定」を遵守する方針を明確化したこと。世界の主要業者が結んだ国際ルールである同協定は、いわゆる「紛争ダイヤモンド」などの密貿易品を取り締まるもの。市場価格の安定化にも寄与するため、昨年、ドバイだけで六十八億ドルに上る宝石・貴金属類を輸入したUAEの決定の影響は大きい。 ただ、懸念されるのはイスラム過激派からの反発だ。ホルムズ海峡に面したUAEは、テロ攻撃などを考えた場合、潜在的には大きな治安リスクに晒されている。ダイヤモンド取引所開設に続く今回の取引厳格化が、UAEの安全を脅かす危険がある。

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