「開校前は五割の合格率なんて浮かれていたが、ウチなんて一割でも御の字ですよ」 関東の法科大学院で教鞭をとる教員の声は湿りがちだ。 今年四月に開校した法科大学院は、裁判員制度などと並ぶ司法制度改革の大きな柱の一つ。十一月に合格者が発表される現行の司法試験には、この日本版ロースクールに在学したまま受験に臨んだ学生も少なくなかったとされる。 ただ、「法曹への近道」として鳴物入りで開設された経緯とは裏腹に、現実はそう甘くないようだ。 まず、司法試験不合格者が大量に発生する問題がある。開校したのは六十八校。二年コース(法学既習者)に約二千三百人、三年コース(未習者)に約三千四百人の計約五千七百人が入学したが、この学校数と人数が最大の誤算だった。 司法試験の昨年度の合格者は約千二百人。「世間知らず」や「頭でっかち」ではない良質な法律家を生み出すとともに、「現代の科挙」とも言われる司法試験地獄の解消も図ろうと、二〇一〇年には三千人にまで増員される見込みだ。 だが、二年コースを終えた一期生が新司法試験に挑む二〇〇六年から五年間は現行試験と新試験が併存するものの、毎年法科大学院を卒業する五千人以上の半数程度が司法試験に合格できない勘定になってしまう。各校の教員が頭を痛めるワケだ。

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