大産油国ナイジェリアで石油泥棒が減らない理由

執筆者:サリル・トリパシー2004年10月号

[ポートハーコート発]ナイジェリアの町トンビアは、植民地時代からパーム油貿易の拠点として栄えた町だった。しかし今では荒れ果て、通りを行き来するのは武装した男たちだけ。彼らは、キリスト教からイスラムに改宗したアサリ・ドクボ率いるニジェール・デルタ人民志願軍の兵士たちだ。 ドクボらの要求は至ってシンプル。ニジェール川の作るデルタ(三角洲)地帯周辺は国に莫大な富をもたらしているにもかかわらず、その恩恵に浴することがない。従って独立を要求するというものだ。たしかに、ナイジェリアからの輸出総額の九八%は石油だが、そのほとんどがデルタ地帯周辺から出る。石油の出る州には収益の一三%を還元すると政府は約束しているが、一九九〇年代はじめまでデルタ地帯に戻されたのは五%以下で、今では政府からの交付金は不払いとなっている。 仮にいくらかの政府交付金があっても、多くは中央・地方政府の腐敗によって消えていく。ドイツのベルリンに拠点を置く汚職監視団体「トランスペアレンシー・インターナショナル」によると、ナイジェリアの汚職汚染度はバングラデシュに次いで世界第二位だ。 ナイジェリアはアフリカ最大の石油産出国であり、OPEC(石油輸出国機構)の中でも第六位につけている。中東情勢の不安定が続くなか、アフリカの石油の戦略的重要性は増している。

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