1時間で集まったジャカルタの10万人デモ

執筆者:竹田いさみ2004年10月号

 インドネシアの首都ジャカルタで政治をウォッチする格好の場所はといえば、日本大使館にほど近い四軒の大型ホテルが密集しているロータリーであろう。今年は九月の大統領選決選投票など大型の選挙が三つもある。去年、今年と例によって何度もジャカルタを訪れることになった。 このロータリーの真ん中には大きな噴水があり、日曜日には憩いの場所として家族連れが集まる。ここから独立記念塔モナスや大統領官邸までは一本道。デモ隊を繰り出す集合場所ともなる。そのためロータリー付近には、海外の新聞社やテレビ局も支局を構える。 ある時、タクシーに乗ってロータリーにさしかかると、道路の中央分離帯に数人の若者が立ち、噴水の近辺には数十名の若者が集まっているのが眼に飛び込んできた。ホテルのコーヒーラウンジから見渡していると、三十分後には数百人に膨れ上がり、一時間後には無数の群集で埋め尽くされて地面が見えないほどになった。これは新興政治勢力の福祉正義党が仕掛けたデモ行進で、十万人が動員されていた。 デモ隊を間近で観察することにした。ロータリーを出発点に、アメリカ大使館まで向かうという。途中、米国のハンバーガーチェーン店「マクドナルド」と国連ビルが向き合う交差点の直前でストップして、アメリカとイスラエルを槍玉に挙げる抗議集会を始めた。デモ行進はきわめて整然と行なわれ、一糸乱れるところがない。その組織力には驚嘆させられた。大規模な平和行進を売り物にしているだけあって、参加者を飽きさせないための工夫が随所に見られる。先頭集団は大型トレーラーに乗り込み、党幹部がスピーカーのボリュームを一杯に上げ、見事に抑揚をつけながら演説を繰り広げる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。