ANC総裁の続投が決まったズマ大統領(右)と新たに副総裁に選出されたラマポーザ氏(c)AFP=時事
ANC総裁の続投が決まったズマ大統領(右)と新たに副総裁に選出されたラマポーザ氏(c)AFP=時事

 2012年12月に南アフリカの与党であるアフリカ民族会議(ANC)の党大会が開かれ、圧倒的多数でジェイコブ・ズマ総裁の続投が決まった。南アフリカでは来年総選挙が行なわれるが、ズマが引き続き大統領を務めることが、実質上決まったのである。

 ズマは評価が難しい人物だ。現在彼には4人の妻がいて、うち3人とは大統領になってから結婚している。外務大臣からAU(アフリカ連合)委員会議長に転身したドラミニ=ズマは2番目の妻だが、1999年に離婚した。婚外子を含めて20人以上の子供がおり、1億円を超える扶養手当を受給している。南アフリカでは民法規定の多くが民族ごとの慣習法に任されているから複婚は違法ではないが、こんな大統領は世界でもアフリカでも珍しい。

 ズマは南アフリカ最大のエスニック集団であるズールー人だ。アフリカには2000ともいわれるおびただしい数の言語があるが、その言語集団にはわずか数百人の部族もいれば、ズールーのように1千万を超える大集団もいる。ズールーは、19世紀に登場したシャカ王のもとで成立した軍事国家が次々と周辺部族を吸収した結果生まれた集団だから「ネイション」と呼ぶのが正確だろう。南アフリカの民主化交渉における最大の抵抗勢力は白人右翼よりもズールーだったのである。ズールーには強い影響力をもつ王家が存在し、ズールー民族政党の「インカタ自由党」はANC主導の民主化に最後まで抵抗した。ズールー懐柔のために登用されたのが、ANCのなかで最高ポストに就いていたズールー人、ズマだった。彼はマンデラ政権ではANCの国民議長、次のムベキ政権では副大統領にまで昇進した。

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